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改定が続く火災保険と地震保険

意外と見落としがちな火災保険見直し基本の基本

平野 敦之平野 敦之

2019/08/28

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イメージ/123RF

2019年10月から火災保険の改定を実施する損保があります。火災保険は自由化された商品のため、地震保険のように各社一律の内容ではありません。また、改定についても必ず2019年10月に実施しなければならないものでもなく、その改定内容も各社同じではありません。近年、火災保険や地震保険といった住まいの保険の改定が相次ぐ中でその改定の背景や今後の動きを見ながら、具体的な対応を考える必要があるのです。

火災保険改定の背景

現在火災保険は各社それぞれ独自の商品を取り扱っていますが、業界団体である損害保険料率算出機構が会員である損保各社からデータを集めて基準となる火災保険の参考純率(※)の算出を行っています。

※事故が発生したときに保険金支払いに充てられる純保険料率の参考数値

保険金の支払いデータなどとともに、毎年度この料率について適正がどうかの検証を行い、必要があれば改定の届出を行います。火災保険は自由化されているので、各社ともこの保険料率を使わなければならない義務はありませんが、これを参考にしつつ自社の改定に反映させていきます。

2019年10月の改定は、2018年5月21日に損害保険料率算出機構が金融庁長官宛てに改定の届出を提出したことによるものです。改定の背景は、「自然災害や水濡れ損害による保険金の支払いの増加」によるものです。

自然災害というのは主に風災や雹災(ひょうさい)、雪災などをいい、地震災害などは除きます。また、冬場の水道管凍結や老朽化による水濡れ損害による保険金の支払い増加も影響しています。

特に構造上は築年数の経過しているマンションなどは水濡れ事故が起きやすい傾向があります。80年代~90年代の景気の良かった時代に何度かマンションブームがあり、かなりの数のマンションが供給されてきました。数が多いため老朽化による事故も増えてくるのです。

次ページ ▶︎ | 火災保険の主な各社の改定内容 

火災保険の主な各社の改定内容

2019年10月からの主な火災保険の改定内容を以下になります。

・火災保険料率の改定
・築年数割引の対象拡大
・各社それぞれの補償内容の改定 など

改定の中心は火災保険の料率が変わるということです。同じ損保でも物件の所在地や構造、火災保険の目的(建物、家財など)によって改定幅は違いますし、値上げ・値下げいずれのケースもあるでしょう。とはいえ、一般的な全国平均での改定幅は、引上げとなるのが最近の傾向です。

何年か前からいくつかの損保が築年数の浅い物件に割引を適用してきました。導入している損保では、概ね新築から10年程度まで(もっと短いケースもあり)で、これ以降は割引が適用されませんでした。この割引範囲を15年などに拡大します。

また、各社自社の商品の細かい補償などを改定することもあるので、個別に確認するようにしてください。損保によっては、自社のHPに改定内容を掲載しているところもあります。別な日程で改正するケースもあるでしょうが、損保業界として改正の動きがあると考えてください。

直近の火災保険・地震保険の改定の動き

住まいの保険は、火災保険と加入している人(加入意向のある人も含む)は地震保険を一緒に考える必要があります。火災保険と地震保険はいずれも近年改定が続いており、前項平均での保険料は値上げの傾向です。

火災保険と地震保険で過去5年の間に行われた主な改定実施は次のとおりです。


一番下にある地震保険の3段階3回目の改定は、改定内容はすでに公表されていますが、時期についてはまだ明示されていません。ここで重要なことは、次のことを確認しておくことです。
・火災保険の契約日はいつか
・火災保険の満期日はいつか
・その間どのような改定があったか

火災保険の加入時期などは個々に違います。まずは現状の確認をすることが重要で、満期後に保険料が上がるのか下がるのか、具体的な数字を押さえておくことです。

次ページ ▶︎ | 火災改定に向けてどう対処するか 

火災改定に向けてどう対処するか

繰り返しになりますが、火災保険の補償内容や保険料、改定内容は各社一律に定められたんものではありません。改定により他社の方が条件がよい可能性もあります。

他社と比較をする前提で、火災保険料・地震保険料を安くするには次のことを念頭においてください。

・契約期間はなるべく長期の方が安い(火災保険は最長10年、地震保険は最長5年)

・保険料はなるべく一括で支払った方が安い(一括払い、年払い、月払いなど)

・必要な補償、不要な補償を確認する(床上浸水の心配がないなら水災の補償を外すなど)

・軽微な損害は自己負担するなど、予算が許すなら免責金額の設定を検討する

補償が本当に不要かについては、住まいの周辺の環境をよくチェックする必要があります。国土交通省のハザードマップなどをチェックしてください。

火災保険の加入先の損保の改定実施の有無や改定される場合の内容、改定で他社とどう変わるかなど比較をするようにしておきましょう。その上で2019年10月に改定の値上がり幅が大きいなら前倒しで火災保険の見直しをすることも検討してみてください。

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この記事を書いた人

平野FP事務所 代表 CFP ®認定者、1級FP技能士、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

東京都出身。証券会社、損害保険会社を経て実務経験を積んだ後に1998年から独立して活動をはじめてFP歴20年以上。また相談業務を受けながら、中小企業の支援にも力を入れている。行政機関や大学での非常勤講師、企業研修などセミナーや講演も多数。メディアでの執筆記事も多く、WEBに公開されているマネー記事は550本以上。2016年にお金の情報メディア「Mylife Money Online」の運営を開始。主な著書に「いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)」がある。誰もが自分らしい人生を安心して豊かに過ごすため、「お金の当たり前を、当たり前に。」をモットーに活動中。「Mylife Money Online」のURLはコチラ→ http://mylifemoney.jp

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